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二本足になったキジ猫くん

TNRのために親子で連れてこられ、私たちは出会いました。

「怪我をしているから、一緒に診ておいてほしい」
そうお願いされて、置いていかれました。

お外で暮らしている猫たちは危険がいっぱい。
だから怪我をしてる子は多くいます。
TNRの際に、「怪我をしているから、一緒に診ておいてほしい」とお願いされることは、珍しいことではありません。

でも・・・
このキジくんの怪我は、とてもとても大きな怪我でした。

右の前足後ろ足とも、大きな傷があり、骨が見え、そこにはたくさんのウジが湧いていました。
足先は大きく腫れ上がって、壊死(細胞が死んでしまっている)状態になっていました。

キジくんは当時生後2ヶ月ほど。
小さな体に負った傷はとても大きく、悲惨なものでした。

右の前足も後ろ足も全く残せる状態ではなく、
無理に残すことで命まで奪いかねない状態でした。

残念ながら『断脚』を選ばざるを得ませんでした。

ただ・・・
右側の前足後ろ足を失ってしまっては、立つことも歩くこともできなくなるのではないか?

すごく悩みました。

そんなとき、過去のSNSで、片側の前足後ろ足を失った猫の記事があったことをかごねこスタッフが思い出したのです。

『片側前足後ろ足でも、生活できるんだ!!!』

私たちの希望は膨らみました。

もしもに備えて、義足の対応もできるよう、前足だけはできる限りギリギリの部分で残そうと計画しました。

この小さな体で頑張って生きてるキジくんを救ってあげたい。
まずは安全に断脚手術を終えること・・・
そして、手術を乗り越えたら、リハビリを頑張ること・・・

目標に向かって頑張りました。

手術を終えた翌日から、片側前足後ろ足にもかかわらず、キジくんは立とうとしました。歩こうとしました。

リハビリの効果もあり、
すぐに歩けるようになり・・・
階段も上り下りできるようにもなりました。

多くの方がびっくりすることでしょう。

どうやってバランスを取ってるのだろう?
猫の身体能力ってすごい!

医療関係者である私たちでさえも、実際目にしてビックリしました。

何より、キジくんの前向きな姿に心を打たれました。

手足を失ったことを悲しむよりも、『今を生きる』ことに一生懸命な姿。
どんなことも諦めることなく、チャレンジする姿。

私たちが普段忘れかけている何かを教えてもらった気がしました。

もしもこのことを知らなければ、『安楽死』を選ばれることだってあるでしょう。

こういう状態であったとしても、『生きられる』ということを多くの方に知ってもらうことが必要だと私たちは思っています。

『生きるチャンスを』
与えてもらえなければ、猫たちだけで選ぶことも叶えることもできません。

キジくんは同じくらいの年齢の茶白くんと過ごすことが増えました。

同じくらいの年齢だからか、
同じように体の不自由があるからか、
2人は意気投合し、
ともにご飯を食べて、遊び、走り回り、
疲れたらともに寝て過ごすように…

2人でいることが増えてから、あることに気がつきました。

顔面麻痺がある茶白くんは、毛づくろいが上手ではありませんでした。
そんな茶白くんのことをキジくんは一生懸命毛づくろいしてあげていました。

キジくんだって体が不自由なのに、
自分のことだけでなく、体が不自由な茶白くんのことを自分のことよりも優先してお世話してくれるのでした。

2人とも不自由なことはあるけれど、
2人ともめげることなく、前向きで、明るく元気。
いつも2人一緒に過ごすことで、お互いの存在が刺激になっているようにも見えました。

小さな小さな体の2人から、『今を生きる』『大切に生きる』ことを学ばせてもらい、これからもまだまだ学ばせてもらうことでしょう。

2人の様子を見ていたら、
なんて小さなことで悩んでるんだろう?
もっと頑張らなきゃ!
と元気や勇気をもらえます。

体が不自由であっても、彼らのように生活できることを知ってほしいのです。
可能性を信じて向き合って欲しい。
決して命を無駄にすることがないように・・・

そして同時に、
すべての子達が助かるとは限らないことも知ってほしいのです。
誰にも見つけられることなく、1人寂しく命を落とすことだってあるのです。
安心安全なお家の中で暮らせたなら…そう思います。

彼らのイラストやグッズを通じて、
いろんなことを考えてもらったり、彼らのことを多くの方へ伝えていってもらえると嬉しいです。